MBC「第4共和国」(1995〜96年)
10.26展開編
◆金載圭の逼迫した状況を1話かけて描写


朴正熙の農村視察場面など、彼の最期の一日も描かれている。



 第一、二回目のタイトルは、「運命の日10.26」。農村視察から、宮井洞大行事の場面まで、朴正熙最期の一日である10月26日当日の様子を描いたのは、第二回目だ。第一回目は、その10月26日に至るまでの情勢を描いている。ここでは、金載圭を中心に、当時の彼の逼迫した状況が描かれる。大統領令嬢・朴槿惠が当時、心血を注いでいたセマウム救国奉仕団の不正事実を調査した金載圭が、今度は逆に大統領から弟の不正について警告親書を受ける事になってしまう。車智Kによる越権行為、彼との衝突。金載圭と車智Kの口論のパターンは、ちょっかいを出してくる車智Kに金載圭が鋭く捨て台詞を吐き、車が悔しそうな顔をするといった展開で、一見、車の方が劣勢のように見えるが、精神的に余裕がないのは金載圭である。大統領から叱責を受けている間は、ほとんど俯いたままの金載圭が、車智Kに横槍を入れられた途端、烈火の如く怒りを表したり、鋭く睨み付けたりする極端な比較は興味深い。



金載圭の内縁の妻と、その息子まで登場する。



 ドラマの中では、御丁寧に金載圭の内縁の妻・張貞伊(鮮于龍女)が登場する。彼がいつも同伴しているのは、妻ではなく愛人の張貞伊で、しかも、その息子まで登場する。彼女の存在は、一般に知られた事ではあるが、実名のまま出てきてしまうところが凄い。



金炯旭失踪事件も関わっているような含みある場面。



 金載圭が内妻の屋敷で休んでいる時に見る夢が金炯旭の殺害場面である。失踪したまま行方が分からない彼が朴政権によって始末されたというニュアンスを金載圭の“夢”として漂わせている。
 勿論この場面は真実かどうか定かではない。“夢オチ”とはいえ、MBCはここで、かなりの冒険を冒したと言って良い。
 金炯旭を演じているのは白壹燮(ペク・イルソプ)という俳優である。前作の金炯旭も、相当アクの強いキャラクターだったが、今作でもその濃さは健在。むしろイケイケ度は増している。他の回でも、金載圭の夢オチ場面には、車智Kと金炯旭のカーアクション付きドンパチ劇が展開されたりして、何処となく視聴者の笑いを誘っている。




“やもめ”となった朴正熙を孤独が襲う。
それを見て涙する車智K、結構イイ奴だったり…。



 朴正熙の孤独、車智Kの忠誠、金載圭の鬱憤が同時進行していく。対米関係の悪化、金泳三除名問題、釜馬事態…様々な内憂外患が政権を困窮させ、朴正熙はますます強硬に回っていく。そして、それが悪化するほど、金載圭は窮地に追い込まれて行くのだ。



朝一番に青瓦台のゴミ拾いをする車智K。朴大統領に対しては健気な忠誠心を見せる。
ところで、何故か名札には「車智徹」と書いてあって……?




竹刀で素振りをする朴正熙。右は愛犬のパンウリを可愛がっているところ。
このパンウリ役の犬、李チャンファンが近寄ると逃げ腰になっていた(笑)。




殺意が芽生える瞬間。「殺す」と日本語で一言。



 金載圭の台詞の中には、度々日本語が登場する。実際に彼は、重要な部分をイタリックで表記するように日本語を交えて話していたらしい。殺害を決意した時、金載圭は「殺す」と搾り出すように一言発する。また、金桂元に心中を語る場面でも、「殺します」と言っている。



金載圭と金桂元の会話場面。
ここでも日本語が登場するが、「ナマノリ(나마노리)」って何……?
実はコレ、「生海苔」ではなく、「生ぬるい」と言いたかったようで。




宮井洞の会食場面。




金載圭に何かとチャチャ入れる車智K(シャレじゃない)。
この後、金載圭の射るような視線と吐き捨てるような台詞が…。




金載圭に撃たれて、動揺する車智K。



 金載圭が最初に発砲したのは歌を歌っている最中である。最初の発砲は、以前では会話の最中とされていたが、近年では歌の最中というのが定説になっているようだ。



問題の場面。車智Kを撃った後、時間を置かずに朴正熙に向けて発砲。



 「第5共和国」では、全く流血を見せずに朴正熙の最期を表現して視聴者の度肝を抜いたが、この「4共」も負けず劣らずの表現で圧巻の場面を作り上げた。
 戻ってきた金載圭が車智Kを銃撃した後は、BGMが消える。画面はややスローモーになり、背景にはただ、車智Kの呻き声とも、女達の泣き叫ぶ声とも判らぬような効果音が流れる。金載圭は朴正熙にすがり付く申才順を引き剥がし、非情にも、その頭部に向けて引き金を引くのである。
 ここでは朴正熙の姿は映らず、逆に髪を乱して大量の返り血を浴びる金載圭の姿が現れる。
 「5共」と「4共」。どちらも甲乙付け難い戦慄の表現を見せてくれた。故に「コリアゲート」の安直な表現にはガッカリさせられたのだ。




沈守峰の眼の前でトドメの一発を発射する。



 「コリアゲート」でも「第5共和国」でも、金載圭が朴正熙にトドメの一発を発射する時に使用した拳銃が、何故かオートマチックだったりする間違いがあるのだが、「第4共和国」では、ちゃんとリボルバーになっている。しかし、このドラマでは、他に決定的な誤りがある。それは、金載圭が車智Kに対して、二発も余分に発砲している事である。最初の銃で二発発砲、次の銃でも二発撃ってしまっている。実際には一発ずつ、計二発しか撃っていない。朴善浩は、前の場面で安載松と鄭仁炯に一発ずつ使用している。この後、金載圭が三発も使ってしまったら、五連発拳銃のシリンダーの中には薬莢しか残っていないではないか。彼は、空のままの銃を所持している事になるのだ。



鄭昇和総長の元にやって来て、水を飲む金載圭。




金載圭、タイーホへの道。




ホンモノと間違えそう…。



 金載圭は鄭昇和を連れながら、朴興柱に陸本へ行くのが良いのか中情へ行くのが良いのかを尋ねる。この運命の岐路と、異変を感じて西氷庫へ向かう全斗煥の場面で2回は終了する。この後は金載圭逮捕、12.12クーデターへと展開し、一段落したところで維新体制の場面に戻っていく。
 映画並みの「5共」には遠く及ばないものの、12.12クーデターのアクションにはそこそこの迫力があった。なお、この「第4共和国」の撮影に当たっては、スタッフに2名の死者を出している模様。
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