SBS「コリアゲート」(1995〜96年)
◆打ち切られたドラマ

 民放ライバル局であるMBCと同時期に、実録政治ドラマを放送し、何かと比較された「コリアゲート」。維新体制当時、米国でのロビー活動が発覚し、物議を醸したのが、このコリアゲート事件である。私は、このドラマの1、2回分しか視聴してないので、全体を通しての出来までは分からない。ドラマ放送中の後半に、全斗煥や盧泰愚ら新軍部の核心人物達が次々と逮捕されていく現実の事件の方が注目を集めてしまい、このドラマは予定より早く打ち切られてしまったようだ。


10.26場面の主な人物
朴正熙
独孤永宰
金載圭
車智K
チョン・ハノン
全斗煥
金桂元
鄭昇和


 とにかく私は、配役陣についても、朴正熙を演じる役者が独孤永宰(トッコ・ヨンジェ)である事以外よく分からない。私が視聴出来た1、2回分はちょうど10.26事件の部分に当たる。この2回を見た限り、MBCの「第4共和国」と比べて、格段に構成が雑である。
 まず、朴正熙を演じるにしては、独孤永宰が若く、元気ハツラツとし過ぎている。容貌はそこそこに似ているのだが、“やもめ”となった大統領の侘しさなどは感じられない。




朴正熙の着ているパジャマが派手。
シルクのサテン織という感じのテカテカ具合。


 カメラワークが酷く、宮井洞の宴会場は、ほとんど同じ角度からばかり映しており、その他の場面でも一部分だけを映していて、あまり金をかけていないのが見え見えである。
 また、金載圭が朴善浩から奪って大統領の頭部に向けて撃った拳銃も、リボルバーではなくオートマチックになっていた。そして、極めつけは、大統領を撃った後に、銃をその場で捨ててしまうのである。実際は、金載圭は逮捕される時まで、その銃を携帯していたのだ。一般的に知られた事実まで、いい加減に作り変えてしまう有様である。
 ついでに、沈守峰と申才順の服装も酷かった。沈守峰は極端なロングコートに、酒席に出るにしてはカジュアル過ぎるスカート姿。対して、申才順はホステスと見紛うほどのミニスカートである。そして、彼女らが宴席に出る前に会って挨拶したのは、何故か車智Kではなく金載圭の方だった。




オープニングテーマは、
おとなしめながらも割とカッコ良かった。


 容貌だけなら、車智Kはそこそこに雰囲気を出していた。演じる役者は、実物よりももっと知性的な顔をしているが(笑)、役回りは単なる金載圭イジメである。
 全斗煥役が凄い。まるで犬のような風貌である。典型的な体育会系で、ガタイもデカイ。見るからに悪役である。
 このドラマでは、金桂元秘書室長が冷静な人物として描かれていて、金載圭の手を握りながら宥める場面が何度か見られる。しかし、マトモ過ぎてやや印象に欠ける。むしろ鄭昇和総長の方が存在感を出していた。ちなみに、鄭総長と会話していた金正燮次長補役の俳優は、MBCの「第三共和国」で、かなり印象の強い金炯旭を演じていた。
 10.26事件を再現したドラマの中で、おそらく最も“みっともない”金載圭は、この「コリアゲート」だろう(笑)。とにかく、「ヘタレ」「女々しい」「根暗」「小心」…幾らでもマイナス要素が出てくる。




ドラマの出だしでは、マトモに見えたのだが…



車智Kのイジメに何も言い返せず、
ストレスを溜めるばかり…。
ちなみに眼鏡をかけているのは、何故かこの場面だけ。


 このドラマで描かれる金載圭は、ほとんど同情の余地ナシである。こんな奴に国家元首を殺されるなんて…と言うより、こういう小心者が権力の中枢にいた事自体気持ち悪い。
 演じる役者は、そこそこに年を食ってる感じなので違和感はないが、どちらかと言えば、金大中に容貌が似ている。




宮井洞の宴会場と、朴正熙射殺場面。
銃口が明らかに、頭部からズレていた。


 テーマが「コリアゲート」で、演じる役者の知名度や容貌などから見ても、このドラマの朴正熙は割りとカッコ良さげである。ただ、その割りに、断末魔の場面は雑だったのだが…。
 とにかく、このドラマ、あらゆる所で大雑把な表現が目立ち、とても大枚を叩いて続きを見ようという気にはなれなかった。
 ちなみに、初回の視聴率合戦で軍配が上がったのは、「第4共和国」ではなく、この「コリアゲート」の方だった。
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