MBC「第5共和国」(2005年)
10.26配役編
◆10年ぶりに帰ってきたMBC共和国シリーズ

 女性向けの恋愛ドラマで日本でも話題になった“韓流”だが、一昔前までの韓国では、どちらかと言えば男性向けの体育会系なドラマや映画が盛んだった。恋愛モノに圧されがちだった韓国ドラマに再び、あの「実録共和国シリーズ」が帰って来た。



実在の人物名で言うと、左から許三守、許和平、全斗煥、盧泰愚、張世東。
割と容貌のイメージを壊してない配役だが、許三守だけは違うかな……。


 「第5共和国」とは、言わば全斗煥政権時代を指す。その政権を支えた主要人物は「ハナフェ(“一心会”の意)」を主体とする陸軍士官学校11期生達だった。またの総称を「新軍部」とも言う。

 さて、この「第5共和国」であるが、10年前の前作と同様、「10.26朴正熙大統領射殺事件」の場面から展開される。全斗煥率いる新軍部が政権を掌握する発端となったのが、この事件であるからだ。当時、陸軍保安司令官だった全斗煥は、10.26事件の主犯・金載圭を逮捕、取調べの中で、金載圭が直前に鄭昇和・陸軍参謀総長を招待して会っていた事を知る。彼らは鄭総長も朴正熙弑害事件の一翼を担ったものとして、総長を逮捕連行。陸軍本部を急襲し、実質的な権力を手中に収める。

 前作から10年も経過した現在、「10.26」はどのように再現されたのだろうか。


10.26場面の主な配役
朴正熙
李チャンファン
金載圭
金炯一
車智K
チョン・ホグン
全斗煥
李コ華
金桂元
ナ・ソンギュン
鄭昇和
朴仁煥
沈守峰
シム・ドンミ
申才順
チョ・ミナ
朴善浩
金ヒョク
朴興柱
金ソンジュン
金鍾泌
李正吉
金大中
林東真


 前作に引き続き、朴正熙役は李チャンファン。
 新軍部の重要人物である盧泰愚役のソ・インソクはJPこと金鍾泌氏ソックリ!で、そのJPを演じているのは李正吉。雰囲気は壊してない。



ヅラを取って演技に挑んだという李コ華。しかし、ヅラを取っても何だか生え際が不自然。
右はヅラの李コ華。髪薄い方がカッコイイような…。



 盧泰愚を演じる徐仁錫(ソ・インソク)。
 絶対JP氏の方に似てる。
 「10.26」ではほとんど
 出てこないが。


 「五共」のキャスティングは難航したのだと言う。今まで、こういった実録ドラマや映画が放送される度に、その実存する関係者達からクレームを受けてきたのだ。役者側も進んで引き受けたがらないらしい。それでも幾人かの勇気ある役者はこの難役に挑んできた。
 ところで、その実在の人物たちを演じる役者を選ぶ基準は何処にあるのだろう?少なくとも、朴正熙に関してだけは、容貌が極力本人に似ている事を条件に選ばれているような気がする。たとえ朴大統領の名前が、「朴正熙」ではなく、別名になっていたとしても、容貌だけはそれとなく朴正熙を思わせるような俳優が選ばれていた(例えば申相玉監督の「蒸発」などがそうであったように)。
 全斗煥を演じる条件は、顔の造形よりも頭の薄さにあるらしい。前作の朴容植は文句なく本人にソックリだったが、今回の李コ華は、主演だけあって実物よりも二枚目である。今回、初めてカツラを取っての出演だと言うが、実物と比べれば遥かに髪が濃い方だ。禿げ頭が特徴とはとても言い難い。
 かつての大統領とはいえ、全斗煥には概して悪役のイメージがあった。12.12や光州事件のような軍事的弾圧、五共非理と呼ばれた収賄など、新軍部が犯した数々の、正義からは程遠い行為が、彼らをヒーローとして扱う事を難しくしていた。しかし、今回の「第5共和国」では、むしろ彼ら側の政治的視点に立って物語が展開されるのだと言う。そのためか、ヴィジュアル面でも、悪党面ではなく、二枚目ヒーロー的な役者達で揃えている。
 数々のドラマや映画で、滑稽な悪党として扱われている車智Kを選ぶ基準は、“体育会系”であるらしい。実物に似せるための条件は、顔の造形よりは、むしろ体格の方にあるように思える。これまで、上背よりも横幅のある役者が選ばれてきている。



少しリアル金桂元に似ている鄭昇和総長。
朴仁煥(パク・イナン)って、聞いた事ある名前だと思ったら、「クワイエット・ファミリー」で主演していた俳優だった。


 金桂元や鄭昇和は非常に無難な線を行っている。二人とも似たような、フツーのおじさんといった感じの役者が選ばれてきているが、どちらかと言えば、金桂元役には、少し情けない雰囲気を出すように要求されているように思える(「コリアゲート」では、鄭昇和より金桂元の方が冷静な人物として描かれていたように見えるが)。
 金桂元は現存しており、鄭昇和も最近まで生存していた人物なので(2002年6月死去)、あまりヘンな扱いはできない筈だが、作品によってはマヌケな感じに描かれる事も少なくない。




前作に続き、金桂元室長には可愛げがある。
ナ・ソンギュンは好演でした。



 極めて謎なのは、金載圭である。彼を演じる役者を選ぶ基準は一体何処にあるのだろう?これまでの作品を見てきても、本人に風貌がよく似ていた例はない。小柄である事が徹底的に要求されている朴正熙と違い、彼の場合は小柄であるという事実は無視されて、大柄な役者がキャスティングされる事も少なくない。MBCのドラマでは、眼鏡をかけている事で特徴を出していたが、この眼鏡さえも、他の作品では絶対的な条件ではないらしく、SBSドラマ「コリアゲート」や映画「その時、その人々」での金載圭は眼鏡をかけていないのである。ただ、せいぜい共通事項を見出すとすれば、金載圭役には、一重瞼でのっぺりした顔立ちの役者は選ばれないようだ。

 後日談:「第5共和国」を見ている内に、金炯一の容貌が、実は金載圭に驚くほどよく似ている事に気がついた。その辺りについては、「勢道韓察日記」にて記している。




最初は似てないと思ったのだが、この金炯一、顔の角度や表情によって、
金載圭本人に似ている事がある。左は目鼻立ちが、右は口元が似ている。


 公判時の金載圭。
 コレは文句なく似ている。


 「5共」で描かれる金載圭は、ごくフツーの人物である。フツーに怒って、フツーに語って、フツーに泣いていた。演じる役者は美男であるが、別に金載圭が英雄的に描かれている訳ではない。どちらかと言えば、滑稽な部分も多い。おバカキャラでありながら、何処となく同情の余地があるように感じられるのは、役者の力量なのだろうか。「マイデイリー(2005年5月2日)」によると、彼を演じた金炯一の演技は、ドラマ初期で最も好評を博しているそうである。(→ソース


 全敬煥。全斗煥の弟です。
 実物も大柄だが、役者も大柄。



ヅラの舘ひろし…じゃなくって、李鶴捧氏です!!
実物も濃い人なんだけど、コレは別の方向にイキ過ぎ……;;




前作よりも髪が薄くなったブルースター役のイ・ハヌ氏



 他に特筆すべきは、ブルースターCIA韓国支部長役の、イ・ハヌ。前作に引き続いての登場である。名前から察するに帰化人であるらしい。
 崔圭夏役は、前作「第4共和国」と同じ金ソンギョム。鈍牛みたいなキャラで愛嬌がある。体型が実物とソックリだ。




崔圭夏総理は、デカ過ぎて小さく収まりませんでした。

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